限界分譲地に作る二拠点・災害避難基地

平時は癒しの二拠点生活を、有事は災害避難基地に

水の確保⑫ 飲み水と塩素消毒

 ここで、少し照準を変えて水、特に飲料水に関して世の関心となっている飲み水と塩素消毒の関係について見ていきたいと思う。

A 塩素が入っているから安心、塩素が無くなっているから不安との言及が多いよう

 だ。特に災害の水備蓄に関して。

B 塩素が入っているから危険・不安という側面もある。

 発がん物質の発生に関連(後述)

C 塩素が入ってもその消毒効果がないという場面もあるようだ。

 クリプトスポリジウム症に関連(後述)

 

と、単純視はできない。

 

 

参考となる水、水質に関する本はとても多い。

水道、水処理に関するプロ、水質に関心を寄せるアマチュアが多いし当然の帰結かもしれない。

当方も次のような書籍(基礎的なもの)を参考・引用しており、感謝御礼申し上げたい。また、ユーチューブなどいくら見ても出てこず、改めて書籍等文字媒体の意義を認識するところだ。

参考資料 

 

消毒とは 

(前掲資料①)

消毒とは 病原性微生物を選択的に死滅させることをいう。

下水やし尿処理水中の病原性微生物大腸菌群数で代表され、公共用水域への排出基準としては、3000個/mL以下にすることが規定されている。このため、処理場の最終段階では消毒設備が設置されている。

 最も一般的な消毒剤は塩素であるが(他に紫外線やオゾンによるものがある)、消毒用塩素剤として最も用いられているのは次亜塩素酸ソーダである。

 同著(①)は次亜塩素溶液による消毒の特徴として次のように記述する。

    現場の安全管理 重要

    放流先の水生生物への影響 有 

 

水道法による規制

(前掲②)

蛇口での残留塩素が遊離塩素の場合、0.1mg/L以上

         結合塩素の場合、0.4mg/L以上

  日本で塩素消毒が行われたのは1920年代から。終戦後米国の指導で水道水に常時塩素注入することとなった。

 

問題点 消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)とトリハロメタン

  消毒剤 が原水中の有機化合物と反応してトリハロメタン(注2)など発がん性の疑いのある有機化合物を生成する。   

         フミン質などの前駆物質(注1)

注1

フミン質とは 

植物などが微生物によって分解されるときの最終生成物で,難分解性の高分子化合物の総称である。腐植物質ともいう。

前駆物質とは

着目する生成物の前の段階にある一連の物質をさすが、一般には一つ前の段階の物質を指す。主要な生体物質の生合成過程について言うことが多い。

                                  (前掲①)

注2

トリハロメタンとは

メタンを構成する4個の原子のうち3個がハロゲン原子である塩素や臭素に置換した化合物のこと。

このうち、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモククロロメタン、ブロモホルムの4物質及び総トリハロメタンについて、水道法による水質基準定められている。

 

トリハロメタンを最初に発見したのは1972年オランダ水道局                             

ライン川の水からクロロホルムを測定し、その原因が河川水を塩素処理することによって生成することを究明した。

                               (前掲⓶)

 

問題点 寄生原虫クリプトスポリジウムには塩素など消毒剤が効かない

 病原性微生物の一つクリプトスポリジウムという小腸に寄生する原虫で起きる病気がクリプトスポリジウム症で激しい水様性の下痢と腹痛を起こす。乳幼児や高齢者では重篤化、長期化することがある。

この原虫による集団感染は1949年に神奈川県平塚市で461人、1996年に埼玉県越生町で8812人が発症している。

 

対策は「検査」と「ろ過(急速・緩速ろ過、膜ろ過)」があげられている。消毒とろ過が別なものであることを気づかせせてくれる。安易に薬に頼るなという素朴な発想は今でも有効に思う。

 

 

水の確保⑪ 貯水タンク(2) 開放型容器と蓋

庭に置いてあるバケツに降った雨を見ると、

うっとりするほどきれいだ。土壌に長年蓄積された肥料や薬品の溶け込みはないし。

 しかしそのまま放置すると藻で緑色になり、葉、昆虫類、土の混入などで汚れてくる。ボーフラも湧いてくるし、心理的にも蓋は必要。

 ではどうやって?

小さな面積なら覆うことも簡単だが、大きくなると難しくなる。

これまで蓋に使ったことのある部材はポリカ波板、同平板、木板、養生用プラダン、

NFボード、ゴムシートなどいろいろ。

なかなかこれで決まり、というものはなかった。

 波板は其の波状の隙間を封鎖するのが面倒、

 光を通すものは防藻の点で問題

 薄くたわむものはへこんでその上に水がたまらないよう補強材が必要だし

 板は絶えず水面に向かう内面が湿気でやられるし

 と。

 

 次の写真上はNFボード板(12ミリ厚)、下はプラダン(黒色5ミリ厚)を蓋にしたもの。

 


 蓋を取った状況

  

 素材を並べてみる。上右はまだ使っていないアルミ複合板。

こちらはビニルシート。安物は経年で柔軟性がなくなる。

浴槽の上に置いたNFボード

 

アルミ複合板は樹脂をアルミで挟んだもので、屋外広告版で使われる。3ミリ厚を入手したので今後使ってみるつもりだ。

 

 

水の確保⓾ 雨水の貯水(1)

 太陽光発電(独立型)と雨水利用の比較

太陽光発電での発電素子(太陽電池)パネルに相応するのが雨水集水面(多くは屋根)

・電気を溜める蓄電池に相応するのが貯水タンク

 太陽電池も蓄電池も高度な工業製品であり価格もかなり高価だ。それに比べ雨水を集水するものは屋根でなくても、例えばブルーシートでよいし、貯水タンクだってごみを入れるポリバケツでもよく雨水利用は庶民にとって入りやすいものに思える。

 

 貯水容器のいろいろ

 集水架台、ろ過に引き続いて「貯水タンク」について考えてみよう。

身近にあって貯水に使えるものというと、ポリバケツがある。

容量は小さいものから100Lクラスまでいろいろある。品質も飲料水保存や給食・調理に使われる高品質なものもあり、また蓋も用意されているのでかなり使える。

次の写真は取水口、オーバーフロー口、と出口計3か所の穴開けをしたもの。小さいながらも完結している。

 

もっと安価で、親しめるものもある。

ただしこういったものは蓋をどうするかが要解決事項となる(後述)

 

なお、日本製に共通する弱点だが肉厚が薄く、強度の点でイマイチ。

 

その点,こちらの海外製品は強度が増すほか、黒色というのもおそらく耐候性レベルが高いことを意味するものと思う。

 

FRP製で頑健さと容量の大きいこと(200L位)が長所である浴槽2種

 

両者ともパイプ孔を閉じる必要があるが接着剤とプラスチック板で対応できるのでこの点は支障とはならない。

 こちらは多くの自治体が補助金を出す日本製の雨水貯水タンクの一例。ブロック3段位の上に置き、竪樋から雨水を引けば済むオールインワンで便利さはあるが樹脂厚さが薄くひ弱な感じがする。

 

結局どれか一つというならこれだろう。数千円で済むのでさほど困難というものではない。

 なお、防藻を考えるなら黒色のものが最適。ただし、中にたまるゴミの集積状況をつかみたいなら黒色は判別しにくくなる。

この材質は塗装が困難であるのも特徴だ。行っている人もいるがどのくらい持つか不明。

 開放型容器への蓋については次回に述べたい。

 

水の確保⑨ ろ過(4) 2槽直列ろ過器の製作(活性炭と精密ろ過膜)

「初めての雨水利用(2010年パワー社 角川浩)」の「ろ過柱」を基礎として次のような2槽式の、ろ過後の貯水槽を含めれば3槽直列のろ過器を作りました。

上から第1槽のペットボトル(1.5L)=原水あるいは粗ろ過後の水を注水

   第2槽 中空糸膜ろ過器(市販品、無改造)

   第3槽 ペットボトル(1.5L)=ろ過済水の貯水槽

以下説明しましょう。

 全体図 1槽を受けるのが板か金具かで2種

 

     

            

 最上部 ステンのざる(味噌こし)をかぶせます。ゴミ類の侵入防止あるいは取り除き

     用。

     ここにもろ材を入れれば別の意味のろ過器になります。例えば浄水用ゼオラ

    イトを入れて放射性物質の排除・軽減など。

 

第1槽下部  ろ過ウールの上に粒状活性炭を置き、そこを通った水が 2槽中空糸ろ過器に流下します。流下速度は、1槽の活性炭、ろ過ウールの厚さ、底部のペットボトルキャップに開ける孔の径で異なってくるのでカット&トライで決めることになります。

 速度の速い遅いがあっても1槽と3槽のぺットボトルが同一容量なら、溢れ、こぼれることはないことになります。 

 

  

 なお、中空糸膜ろ過器(市販品)には一切の加工を加えません。2024年3月のK製薬の食品関係製造品事故を見てもわかるように口に入れるものは最大限の注意を払うべきです。

あくまで中空糸膜ろ過器(市販品)に入れる前の段階でより良い水を用意しましょうというのがスタンスで、集水架台もその一つです。

 なお、中空糸膜ろ過器(市販品)には付属品として逆洗浄に使う注射針がついていて感心しています。

 ペットボトルはコーラ、サイダーなど炭酸系のものがある程度の厚さがあって適しています。安価な水のボトルはいかにも脆弱です。

水の確保⑧  ろ過(3) ろ材(活性炭と精密ろ過膜)の組み合わせ

 問題は中空糸膜をどう調達し、どう活性炭と中空糸膜と合体させるかです。

ここで助かったのが「携帯用浄水器」と呼ばれる中空糸膜をろ材とするアウトドア用品がかなり出回ってきていることです。

2種購入してみました。写真AとBです。(右端はクリンスイのカートリッジ)


登山その他冒険先で現地の水をろ過して口に入れるもので携帯に適する大きさ・形態です。価格も3千円位で入手できます。

アウトドア用「携帯用浄水器」の多くは上の注入口に原水を入れ、下の吐出口を口に含んで浄水を飲むというものです。

 

ただし上の原水注入口はペットボトルの首を直接連結させることができるので井戸、川、雨水を入れたペットボトルを連結させ、チューブ、ホース類を介在させることなく浄化することができます。

携帯浄水器を複数の者で利用したいとき、予備的に多量の浄水をためておきたいというときは吐出口にチューブをつけて他の容器に連結させることで対応できます。

吐出口にもペットボトルと直接接続できるようにした製品もあるので使い方によっては便利でしょう。

 

       

                      

                           

 

ペットボトルの水を原水とする場合あるいは浄水をペットボトルに溜める場合、かなりの縦長になり手で持っていないと転倒してしまい面倒です。

これについては次の書籍記事がが参考になります。

  パワー社 2010年「初めての雨水利用」  著者 角川浩

上の「ろ過柱」を参考にオリジナルなものを作りました。 (この項続く)


 

 

 

 

 

3水の確保⑦ ろ過(2) -ろ過方法を考えるー

<ろ過方法>

 井戸水などで古くから行われていた素朴なろ過は棕櫚、小砂利などを使う物理ろ過です。

しかし砂や砂利を使ってもそこに絶え間のない水の存在と流れがなく普段はカラカラの状態では「緩速ろ過」で想定される生物ろ過効果による細菌対策までをも望むのは無理です。

今、煮沸や薬品の使用は別としてろ過材として多く使われるのは活性炭で、DIYでろ過を考える方はほぼこれに依拠しているようです。

しかし、活性炭は量にもよりますが浄水にかなりの効果があるものの細菌の分解・除去まで行えるものではありません。それゆえ、DIY雨水利用で飲用迄を前提にする例はほとんど見受けられません。

<膜ろ過>

ここで水処理の産業界を見ると「砂ろ過で取り除けない細かい濁質は膜を使って取り除く」とされ、そう運用されているようです。結論から言って私も費用、装置、技術的困難度、特に有事における特殊状況を考えると粒状活性炭+膜ろ過が目的にかなうと考え、それによることを前提にしました。

 

<膜ろ過とは>膜の孔の大きさでふるい分ける「ふるい作用」によるものです。微生物を使う生物ろ過よりずっと安定し、かつ小型化ができ、この点でも有事向きでしょう。

ろ過に使う膜には精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、海水の真水化に使われる逆浸透膜(RO膜)があります。後者ほど孔が小さくなり、より微細な物質を阻害できますが圧力や電力を要するなどで使用のハードルは高くなります。

精密ろ過膜(MF膜)は圧力なしに(位置エネルギーを使用)おおむね0.1㎛以上の物質の通過を阻止できるのでウイルスは無理としても細菌は阻止されることになり、個人で用いる浄水装置として妥当と考えます。災害緊急ろ過器にも使われています。

注)

精密ろ過膜(MF膜)として多く使われているのが中空糸膜(ちゅうくうしまく)といわれるもので家庭用浄水器の多くはこれを用いていますがその歴史は新しいようです。

 

注)クリンスイの家庭用浄水器総合カタログに次のような記載がありました。

活性炭での浄水が一般的だった1984年、私たちは中空糸膜フィルターを採用した世界初の浄水器クリンスイ」を発売しました。

総販売元三菱ケミカルクリンスイ

   

 

さて、市販の家庭用浄水器といっても蛇口直結型、ポット型、ビルトイン型などいろいろあり、この中でどれを使ったらよいかですが、水道水だけを前提にするのではなく雨水、井戸水、河川水など細菌の混入の恐れのある原水の浄化をも考えるので活性炭と中空糸膜双方で構成されるカートリッジを組み込んだもの、そしてろ材の量、ろ過に使う時間に余裕のとれるポット型が望ましいと考えます。

雨水利用で有名な墨田区雨水市民の会クリンスイの家庭用浄水器に使われる浄水カートリッジ(cpc5w-nw)を用いて家族が入った後のお風呂の水についてろ過実験を行い、その検査機関による結果を合わせて公開しています。大変有意義、有益なので閲読をお勧めします。

 

私は、活性炭の量を増やしたいこと、そして活性炭の有機物堆積によるつまりでろ過カートリッジ全体を頻繁に交換するのはもったいないと考え、活性炭と中空糸膜の層を分離することにしました。

注)粒状活性炭の価格はリーズナブルで1㎏単位でネット購入できます。

 

<問題は中空糸膜をどう調達し、どう中空糸膜と合体させるか>ですが、これについては次項で。

 

3 水の確保⑥ ろ過(1) はじめに

はじめに

日本の水道水は安全でそのまま飲めると誇らしげに語られます。

では、もし、テロ・戦争など意図的な攻撃で浄水場施設が破壊され、水道水が利用出来なくなったらどうしますか。

そんなことが起きるはずはない、ではなく起き得ることはウクライナやガザではっきりしてしまいました。日本でも戦争ではなく原発事故で似たような目にあっています。

2011年3月11日、原発事故後東京圏の飲用水の取水源となる河川の上流に放射性物質を含んだ雨が降り注ぎ、11日後の3月22日、その水を水源とする東京金町浄水場で放射性ヨウ素が検出され(1Lあたり210ベクレル)、浄水場が機能を停止してしまいました。

金町浄水場も千葉県側の栗山浄水場も「男はつらいよ」「野菊の墓」の舞台地であり、よく知っている場所だけにショックを受けました。まだマスコミもそれほど騒いでおらず、念のためペットボトルでも買っておくかとあたりのお店に赴きましたが、どこも空っぽ。これまでの人生で一度も足を踏み入れたことのないほこりが積もっているような辺鄙な場所のうらぶれたお店に行ってもありませんでした。

究極ともいえるような危機について人はマスコミが騒がなくても動物的な感で察知でき、買い占めに走ったようです。オイルショック時のトイレットペーパー不足どころではない静かでぞっとするような雰囲気でした。

 

再度、浄水場からの水道水がストップしたらどうしますか。

 

飲用可の井戸水や沢水が身近にあって利用できる人は幸いです。問題はそれができない場合です。お店に買いに行ってもペットボトル入り飲料水は売り切れでしょう。水道局浄水場の非常用に備えるストックも、自衛隊の出動もあまりに求める人が多く、浄水場の機能停止が長くなるにつれ対応できなくなります。

ミサイル攻撃を受け、身を潜めている人が「食料も水も電気もない」と話している光景を忘れることはできません。

 

私は誰でも、どこでも可能な雨水利用をお勧めします。雨水は本来、蒸留水に近いきれいな水です。地下水 ―水道の原水として使うこともあるー は自然由来あるいは混入する汚染排水によるヒ素等で汚染されていることもあります。安全と思われる水道水も使われる塩素起因の発がんの恐れがあるトリハロメタンが発生するといった問題も生じます。

雨水は集水面(「集水架台」の製作として既述)、送水パイプ、貯水容器、給水蛇口の衛生状況に注意しながら、これから述べる適正な「ろ過」を加えることで飲用にすることができるからです。

注)浅井戸や日本の40数パーセント(70%を超えるとの説もあります)の水道水が原水として頼っている河川水はほとんどがそのままでは飲めません。大都市浄水場の水も最終的に飲用可までに達するのは「高度浄水処理」と薬品(水道法により蛇口段階で一定レベル以上の残留塩素があることが必要とされている)に依ってのことです。